友禅の買取相場はどれくらい?友禅の染色技法について解説!
着物には様々な染め方があります。その染め方によって着物の印象が変わります。
着物の染色技術の中でも代表的なのが友禅。この名称を聞いたことがあるという方も多いのではないでしょうか。
今回は、そんな友禅の特徴や歴史、その種類などについて詳しくご紹介していきます。
友禅の特徴
友禅染は多彩な色合い、複雑な模様が特徴です。
防腐剤を置いて染色していくことで、細かな模様でも色同士が混ざらずに繊細な模様を描けるようになっています。
生地の糊を落とし幅出し、湯のしをして、さらに仮縫いをして防腐剤となる糊で模様を描き、その上から顔料、植物染料などを刷毛で塗布していきます。
これを蒸し、その上にまた染料を重ね…という工程を繰り返し、最終的に水洗いをして糊を落とすという複雑で繊細な注意力が必要な方法で染められていきます。
描き上げ友禅
基本の本友禅は糸目糊という糊を利用して絵柄を描いていきますが、描き上げ友禅ではこの色目乗りは使いません。
直接生地に模様を描き染め上げていきます。
この手法にすることによって生地の色と模様が一体化し、より柔らかい印象に仕上がります。
振袖など華美な着物よりや、訪問着、付け下げ、着尺など普段遣いできる着物に用いられることが多いです。
描き上げ友禅の他に、無線友禅と呼ばれることもあります。
型友禅
型友禅は型紙と写し糊を用いる染色技法です。手書きの友禅に比べると一度で大量生産が可能で、価格も安く、気軽に本格的な友禅の着物を楽しむことができます。
しかし型紙は一つの型で一色しか染めることができません。多色の友禅染にするには1枚の着物に20枚から50枚以上の型紙が必要となり、ズレのないよう細心の注意を払って染め上げる必要があります。
型紙で染めると聞くと簡単に聞こえますが、手書きの友禅と同様熟練の技が必要になります。
型友禅は京都の他、東京、金沢、新潟などでよく生産されています。
ろうけつ友禅
ろうけつ友禅は模様になる部分を蝋でなぞり、あらかじめ染まるのを防いで他の部分に色をつけていく染色方法です。
筆や刷毛で、溶かした蝋を生地に塗っていき模様を描きます。その部分を染めて水洗いすると、蝋を塗った部分だけが白く残ります。
複数の色を用いるためにこの工程を繰り返していきます。
この手法は中国、インドネシア、マレーシア、タイなどでも用いられており、各地で独自の進化を遂げています。
友禅の買取相場について
様々な美しい柄を楽しめる友禅ですが、買取市場ではどのように扱われているのかチェックしてみましょう。
友禅は着物の中でも比較的高価格で買取してもらうことができますが、型友禅よりも描き上げ友禅の方が高額での買取となります。
友禅としてブランド力のある京友禅などは、中でもより高額での買取となることでしょう。他にも有名作家手がけたものなども高価買取となります。お手持ち友禅のブランド、作者などを確認してみましょう。
しかし、いくら有名なブランドだから、有名な作家ものもだからと言ってもすべての友禅が高価買取となるわけではありません。
友禅の状態によって買取価格が上下する場合も多いです。買取査定に出す前に、シミ、虫食い、日焼け、においなどがないか確認しておきましょう。においなどは、数日日陰に干すことである程度解消することができます。
また、有名作家の友禅には証紙が付属していることが多いです。証紙とはこの作家が作成したという証明書のようなもの。
この証紙のあるなしで、同じ友禅でも買取価格が変わってしまいます。その他箱などの付属品などもできるだけ揃えて買取査定をお願いしましょう。
一緒に帯、襦袢などの着物にまつわる小物を売ることでさらに買取金額アップを目指すこともできますよ。
友禅の技法
友禅染には分業とすべて一人で作業を行うものがあります。それぞれの詳細をチェックしてみましょう。
分業制
主に京友禅で行われる手法です。
それぞれの作業を専門の職人が行い、1枚の着物を作るのに10人以上の職人の手を渡ることになります。
京都は着物に関する職人が多く、このように手間や技術の必要な手法を取り入れることができたと言われています。
すべて一人で行う
一方で加賀など職人の数が少ない地方では、すべての作業を一人の職人が行うことになります。
1枚の着物ができあがるまでに膨大な時間が必要になりますが、その分作家の個性を生かした独創的な着物に仕上がるのが特徴です。
友禅の歴史
友禅という名前は、江戸時代に誕生しました。京の扇絵師、宮崎友禅斎が生み出した技法です。
宮崎友禅斎の扇は当時とても人気がありました。
この宮崎友禅斎の絵は様々な色と取り入れ、カラフルで曲線的、デフォルメされた動物や風景などの絵柄が特徴でした。
その扇に描いた絵を着物に反映させたのが友禅染の始まりです。
当時、奢侈禁止法という決まりが交付され、着物に絞りや刺繍などを入れることができなくなりました。そこで宮崎友禅斎のような絵師が着物に柄を入れられないかと考案したのです。
友禅染は京で誕生しましたが、その後宮崎友禅斎本人によって現在の石川県、当時の加賀藩に持ち込まれたものが加賀友禅となります。
さらにその後明治時代には型紙友禅が発案され、友禅染が全国的に広まるようになっていきます。
1856年にはイギリスから科学染料が持ち込まれ、友禅の色彩はより豊かなものになりました。
それ以降は振袖などの豪華な着物に友禅染が使用されるようになっていきます。
友禅の種類
友禅は京都で生まれ、その後様々な地域に持ち込まれていきました。その地で独自に発展を遂げたものも多く、一口に友禅と言っても様々な特徴があります。
代表的な友禅の種類について見ていきましょう。
京友禅
友禅染が最初に認識されたのがこの京友禅です。
京友禅は柔らかな色彩、そして多彩な色合いが特徴です。ぱっと見何色がメインなのか分からないほどたくさんの色を使用していますが、どこかまとまりがあり、品のある仕上がりのものが多いです。
華やかな色彩、デザインは晴れの日の着物にぴったりと言えるでしょう。
デザインは古風なものが多く、刺繍、金箔などもふんだんに用いてより華やかな仕上がりになっています。
絞りや刺繍などの職人が多く京都にいたことから、これらを組み合わせた着物ができるようになっています。
さらに京友禅は分業制。一つの作業をそれぞれの職人が行います。染色、刺繍などがそうですね。
一枚の着物を一人ですべて作り上げるという職人はかなり少ないです。
加賀友禅
京友禅が加賀藩に持ち込まれたものが加賀友禅です。
加賀友禅も京友禅と同じく様々な色合いを使用しているのが特徴ですが、中でも加賀五色と呼ばれる臙脂、黄土、古代紫、草緑、藍、さらに紅色、紫などの深みがある色を基調にしているものが多いです。
京友禅は華やかな印象ですが、加賀友禅はどこか厳かで優美な印象となります。
リアルな表現のものも多く、この点も京友禅との大きな違いとなります。
また、京友禅のように絞りや刺繍に関する職人がいなかったため手書きの技法のみになっています。
加賀友禅を作れるのは加賀染振興協会に認定された作家のみ。どの着物が誰によって作られたのかひと目でわかるようになっています。
現在260名程度の作家が登録されていますが、実際に活動している作家はさらに少なく、後継者問題もあります。
一時期は絵柄の輪郭から中央に向けて色がグラデーションになっているものが加賀友禅、中央から輪郭へ向けてグラデーションになっているものが京友禅と言われていましたが、現在ではそのような明確な決まりごとはありません。
東京友禅
江戸の文化を反映させた東京友禅。江戸友禅とも称されることがあります。
江戸時代中期に広まったもので、参勤交代の際に大名お抱えの染師が江戸にやってきてその文化を広めたのが始まりと言われています。
当初は京友禅のように分業制での作業でしたが、第二次世界大戦後東京は大きな打撃を受け、数々の優れた職人を失いました。
そのため現在では一人の職人が一からすべてを作り上げる手法がメインとなっています。
東京友禅は江戸の町人が好む渋く、落ち着いた色合いが多いのが特徴です。
柄は千鳥、磯の松、葦、釣り船などの風景が多いです。
大奥や大名の奥様のためには御殿風と呼ばれる柄も作られていました。
シックな印象ながらセンスがあり、都会的でバランスのとれたデザインのものが多いです。
まとめ
着物の染め方の中でも代表的な友禅について詳しくご紹介いたしました。
一口に友禅と言っても、よく見ると地方や染色方法によって様々な表情を楽しむことができます。
現在では友禅染優風にプリントされた着物も多いですが、本格的な友禅染の色合いはやはり素晴らしく、買取市場でも高価で取引されています。